計算ロジックについて
1. 年金計算の簡略化について
重要なお知らせ
また、本シミュレーターでは、ユーザビリティと計算速度を優先するため、 年金計算などを簡略化しています。実際の年金額とは異なる場合がありますので、 参考値としてご利用ください。
現在の計算式
基本年金額 = 180万円 × (現在の年収 ÷ 400万円) × 年金率
年金計算の具体例
年収600万円、楽観シナリオ(年金率100%)の場合:
基本年金額 = 180万円 × (600万円 ÷ 400万円) × 100% = 270万円
年収400万円、悲観シナリオ(年金率60%)の場合:
基本年金額 = 180万円 × (400万円 ÷ 400万円) × 60% = 108万円
※ 年金率はシナリオによって60%~100%で変動します
退職後の年金収入構成
退職後の総収入は以下の2つから構成されます:
- 基本収入: 現在の年収 × 年金率
- 年金収入: 基本年金額(上記の式で計算)
総年金収入 = 基本収入 + 年金収入
年金手取り額が徐々に減少する理由
年金の総支給額(額面)は退職後一定ですが、以下の要因により手取り額が年々減少します:
- 税率の経年増加
- 所得税:年0.5%上昇
- 住民税:年0.1%上昇
- 健康保険:年0.2%上昇
- 社会保険料上限額のインフレ調整
- 標準報酬月額の上限が物価上昇に連動
- 高所得者の場合、実質的な保険料負担が増加
実例(年収400万円のケース):
初年度手取り:約291万円 → 10年後手取り:約262万円
(約29万円の減少は主に税金・社会保険料の増加による)
簡略化の理由
- 実際の年金計算は非常に複雑で、加入期間、平均標準報酬額、再評価率など多くの要素が関わります
- 将来の制度変更を予測することが困難です
- シンプルな計算式により、ユーザーが結果を理解しやすくなります
- 計算処理が高速化され、リアルタイムでシミュレーション結果を確認できます
実際の年金計算との違い
- 実際の年金は「老齢基礎年金」と「老齢厚生年金」の2階建て構造です
- 加入期間(最大40年)による調整が考慮されていません
- 配偶者の年金や加給年金などの付加給付が含まれていません
- マクロ経済スライドによる給付水準の調整が反映されていません
2. 税金計算の詳細
給与所得控除の計算
課税所得を計算する前に、給与収入から給与所得控除を差し引きます。2025年度の給与所得控除額は以下の通りです:
給与等の収入金額 | 給与所得控除額 |
---|---|
162.5万円以下 | 65万円(最低保証額) |
162.5万円超 1,800万円以下 | 収入金額 × 40% - 10万円 |
1,800万円超 4,000万円以下 | 収入金額 × 30% + 170万円 |
4,000万円超 | 収入金額 × 20% + 410万円(上限650万円) |
給与所得控除の計算例
年収500万円の場合:
給与所得控除額 = 500万円 × 40% - 10万円 = 190万円
給与所得 = 500万円 - 190万円 = 310万円
課税所得 = 310万円 - 基礎控除58万円 = 252万円
所得税の計算
所得税は累進課税制度に基づいて計算されます。2025年度の税率表を使用しています。
課税所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円超 330万円以下 | 10% | 9.75万円 |
330万円超 695万円以下 | 20% | 42.75万円 |
695万円超 900万円以下 | 23% | 63.6万円 |
900万円超 1,800万円以下 | 33% | 153.6万円 |
1,800万円超 4,000万円以下 | 40% | 279.6万円 |
4,000万円超 | 45% | 479.6万円 |
所得税計算の具体例
課税所得252万円の場合:
所得税額 = 252万円 × 10% - 9.75万円 = 15.45万円
(195万円超330万円以下の税率区分を適用)
住民税の計算
住民税は一律10%(所得割)+ 均等割(5,000円)で計算されます。 将来的な税率上昇も考慮に入れています。
住民税計算の具体例
課税所得252万円の場合:
所得割:252万円 × 10% = 25.2万円
均等割:0.5万円
住民税合計:25.7万円
3. 社会保険料計算の詳細
現役時代の社会保険料
- 健康保険料:標準報酬月額の4.99%(労使折半後)
- 厚生年金保険料:標準報酬月額の9.15%(労使折半後)
- 介護保険料:40歳以上65歳未満は0.80%(労使折半後)、40歳未満は課税なし
- 雇用保険料:給与の0.5%
定年後の社会保険料
- 国民健康保険料:所得の約5%(簡易計算)
- 介護保険料(65歳以上):所得の約2.05%
- 厚生年金保険料・雇用保険料は負担なし
標準報酬月額の上限
社会保険料の計算には上限があり、現在は月額62万円(年額744万円)が上限となっています。 この上限は物価上昇に連動して調整されます。
介護保険料の年齢制限
40歳未満:介護保険料の負担なし(0円)
40歳〜64歳:第2号被保険者として年収の0.80%(労使折半後)
65歳以上:第1号被保険者として年収の約2.05%
※ 40歳の誕生日を迎えた月から自動的に介護保険料が課税されます
4. シミュレーションの仕組み
年齢別詳細計算
シミュレーションでは、現在の年齢から予定寿命まで、1年ごとに詳細な計算を行います:
- 毎年の収入(給与または年金)
- 毎年の支出(生活費、教育費、税金、社会保険料)
- 資産の増減(貯蓄、投資、退職金の受け取り)
- 投資リターンの複利効果
破産判定と危険度レベル
シミュレーションでは、資産がゼロになった時点で「破産」と判定し、5段階の危険度を算出します:
危険度レベル | 状況 | 説明 |
---|---|---|
超安全 | 破産なし | 予定寿命まで資産が十分残る |
安全 | 破産なし | 資産は残るが余裕は少ない |
注意 | 85歳以降破産 | 高齢期の資産不足 |
危険 | 75歳以降破産 | 老後早期の資産不足 |
即座に危機 | 75歳未満破産 | 退職直後から資産不足 |
破産判定の具体例
現在35歳、退職時資産1,000万円、年金150万円、生活費300万円の場合:
毎年の赤字:300万円 - 150万円 = 150万円
破産予定年齢:65歳 + (1,000万円 ÷ 150万円) = 約72歳
危険度レベル:危険(75歳未満破産)
必要退職資産の計算
破産を回避するために必要な退職時の資産額を自動計算します:
必要退職資産の計算例
予定寿命85歳、年金150万円、生活費300万円の場合:
退職後の生活年数:85歳 - 65歳 = 20年
年間赤字:300万円 - 150万円 = 150万円
必要退職資産:150万円 × 20年 = 3,000万円
5. 支出計算の仕組み(物価上昇・消費税)
支出計算の基本方針
支出の将来予測では、税抜きベースで物価変動を計算し、その後に該当年の消費税率を適用します。 これにより、物価上昇と消費税率変動の影響を正確に分離して計算できます。
支出計算の3ステップ
基準年の税抜き支出を算出
基準年の税抜き支出 = 基準年の支出 ÷ (1 + 基準年の消費税率)
物価変動を適用
目標年の税抜き支出 = 基準年の税抜き支出 × (1 + 物価上昇率)^年数
目標年の消費税率を適用
目標年の支出 = 目標年の税抜き支出 × (1 + 目標年の消費税率)
計算の具体例
30歳から31歳の支出算出例
前提条件:
- 30歳時の支出:240万円(消費税10%込み)
- 物価上昇率:3.3%
- 31歳時の消費税率:10.2%
計算過程:
- 30歳時の税抜き支出:240万円 ÷ 1.10 = 218.18万円
- 31歳時の税抜き支出:218.18万円 × 1.033 = 225.38万円
- 31歳時の支出(税込み):225.38万円 × 1.102 = 248.37万円
物価上昇率データソース
物価上昇率は実績データと予測データを組み合わせて使用しています:
期間 | データ種別 | 物価上昇率 | 備考 |
---|---|---|---|
2000年-2024年 | 実績データ | -0.7%〜3.3% | 政府統計・日銀データ |
2025年-2035年 | 予測データ | 2.2%〜3.5% | 経済予測モデル |
2036年以降 | 安定想定 | 1.0% | 長期安定想定 |
インフレ率と将来予測
長期的な影響例
現在の年間生活費:300万円、平均物価上昇率:2%の場合
1年後:300万円 × (1 + 2%) = 306万円
5年後:300万円 × (1.02)^5 = 331万円
10年後:300万円 × (1.02)^10 = 366万円
20年後:300万円 × (1.02)^20 = 446万円
複利効果により、20年で約49%増加
社会保険料上限額の調整例
現在の標準報酬月額上限:62万円、インフレ率:1.5%の場合
5年後の上限:62万円 × (1.015)^5 = 67万円
10年後の上限:62万円 × (1.015)^10 = 72万円
物価上昇に連動して保険料の上限も調整されます
消費税率変動の影響例
新方式による消費税率変動の計算例
基準年(2024年):消費税率10%、支出300万円
目標年(2030年):消費税率12%、物価上昇率年2%
計算過程:
1. 基準年税抜き支出:300万円 ÷ 1.10 = 272.73万円
2. 2030年税抜き支出:272.73万円 × (1.02)^6 = 307.1万円
3. 2030年税込み支出:307.1万円 × 1.12 = 344.0万円
物価上昇と消費税率変動の影響が正確に分離されています
シナリオ別設定
シミュレーションでは3つのシナリオを選択できます:
項目 | 楽観シナリオ | 標準シナリオ | 悲観シナリオ |
---|---|---|---|
年収上昇率 | 5% | 2% | 0% |
年金率 | 100% | 80% | 60% |
物価上昇率 | 実データ+予測 | 実データ+予測 | 実データ+予測 |
消費税率上昇 | 年0.1% | 年0.2% | 年0.3% |
投資リターン | 8% | 5% | 3% |
物価上昇率データの統一
全シナリオで同じ物価上昇率データ(INFLATION_DATA)を使用します。 これにより、実際の経済動向に基づいた統一的な予測が可能になります。 シナリオ間の違いは、消費税率上昇や投資リターンなどの他の要因で表現されます。
将来予測の前提
- 税率は段階的に上昇すると仮定(所得税:年0.5%、住民税:年0.1%など)
- 社会保険料率も同様に上昇すると仮定
- 投資リターンは一定と仮定(実際は変動します)
- 子供の教育費は20歳で一括支払いと仮定
税率上昇の影響例
現在の所得税率:10%、年間上昇率:0.5%の場合
5年後の税率:10% + (0.5% × 5年) = 12.5%
10年後の税率:10% + (0.5% × 10年) = 15%
長期的な税率上昇も将来の手取り額に大きく影響します
6. 教育費の計算
教育費の設定
子供の教育費は進学先に応じて以下のように設定されています:
進学先 | 総教育費 | 支払い時期 |
---|---|---|
高校まで | 300万円 | 子供が20歳の年 |
国公立大学 | 800万円 | 子供が20歳の年 |
私立大学 | 1,200万円 | 子供が20歳の年 |
大学院 | 1,500万円 | 子供が20歳の年 |
教育費計算の具体例
子供2人(現在5歳と8歳)、私立大学進学の場合:
第1子(8歳):あなたが47歳の時に1,200万円支払い
第2子(5歳):あなたが50歳の時に1,200万円支払い
総教育費:2,400万円
※ 教育費は一括支払いとして計算されます
7. 制限事項と今後の改善予定
現在の制限事項
- 配偶者控除、扶養控除などの詳細な控除が考慮されていません
- iDeCo、NISAなどの税制優遇制度が反映されていません
- 退職金の税制優遇が簡略化されています
- 相続税、贈与税は考慮されていません
最新の改善内容
支出計算の精度向上(2024年12月更新)
- 税抜きベースでの物価変動計算を実装
- 消費税率変動の正確な反映
- 実績データに基づく物価上昇率の採用
- デバッグ機能による計算過程の透明化
今後の改善予定
- より詳細な年金計算式の実装
- 配偶者の収入を考慮したシミュレーション
- 医療費控除、住宅ローン控除などの追加
- 地域別の国民健康保険料率の反映
※ 本シミュレーターの計算結果は参考値です。実際の税金や年金額は、 個人の状況や将来の制度改正により異なる場合があります。 重要な判断をされる際は、必ず専門家にご相談ください。